プロダクションノート

ルーとルースの名演技

動物が出てくる映画では、1つの役に見た目が似た2匹をダブルスタンバイするケースが多い。しかし本作では、新津ちせとルーが撮影前から一対一で築いてきた関係性を重視し、ルーもルースもそれぞれ1匹で出演している。
実際のルーはとても人好きな犬で現場に入るとすぐに尻尾を振ってスタッフに近づいて行った。ルーの特徴としては、全くと言って良いほど吠えない犬で、声を聞いた者はいなかった。ただ、現場で唯一声を出したのが、臨海学校に行くサヤカとの別れのシーンの本番で、寂しそうに小さく鳴き、スタッフが驚いたという。サヤカと落ち葉で遊んでいるシーンは、落ち葉で興奮しているルーを監督が見て、急遽作ったシーンである。
ルース役を演じたミノルカは、保護された元野犬ということもあり、最初は飼い主以外の人に慣れるかが心配であったが、全く心配は要らず、ルー同様とても人好きであった。また、撮影現場で会うルーとはとても仲がよく、いつも戯れあっていた。今は、ルーとルースは仲良く一緒に暮らしている。

photo
photo
photo

“赤い電車”の撮影

物語の重要なモチーフである、海沿いを走る“赤い電車”は原作の設定通り、京浜急行電鉄株式会社(以下、京急電鉄)の車両で撮影している。原作が書かれた15年前と比べると、広範囲で線路が高架化されて踏切が減り、また新しい電車も多数加わっているため、監督のイメージ通りの場所を1500形電車が走るタイミングは限られていた。
しかし、2018年に創立120周年を迎えた京急電鉄の全面協力により、特別にダイヤの調整が行われ、撮影が実現。さらにサヤカとフセ老人が海に行くシーンでは、犬たちをキャリーから出しての撮影が特別に許可され、首都圏の電車では通常は不可能な撮影が可能となった。
なお走行中の電車の中で撮ったこのシーンは、撮影可能な時間がわずかしかなかったものの、ルーを含むスタッフ・キャスト全員の息がぴったり合い、無事に撮りきることができた。

photo
photo
photo

母の愛情がつまったサヤカの服

サヤカが着ている洋服の多くや、いつも身につけている斜めがけの散歩用バッグは、母の手作りという設定に合わせてスタイリストの城宝昭子が作ったもの。監督のイメージをもとに、決して高級ではないが心地よい素材、華美ではないが細部まで愛情のこもったデザイン、今どきではなく時代が限定されないスタイルが採用されている。
ルーと出会った頃の幼い子どもらしい格好と、ワンピースにペタンコ靴など少しお姉さんらしくなる成長後の服装の違い、そして坂井真紀演じる母、市毛良枝演じる祖母との共通点にも注目。世代にあったナチュラルで着心地よいおしゃれを楽しんでいる。
一方、フセ老人をはじめ、大人たちが身につけている洋服は既製品だが、それぞれ気に入った服を長く大切に着ているという設定にふさわしい風合いを出している。

photo
photo